福岡県うきは市は「フルーツ王国」! 「スイーツ案内課」も発足

 柿にブドウにモモ、イチゴ―。福岡県うきは市は年間を通じて多くの果物が収穫される。豊かな自然環境を生かした「フルーツ王国」としての魅力を高めている。東西に約30キロ続く耳納連山と九州一の大河筑後川に南北を囲まれ、農作物の栽培に適した風土を「うきはテロワール」と名付けてPRを展開。直売所は平日から買い物客がどっと押し寄せ、4年間で市内のスイーツ店が倍増するなど、人口3万人弱のまちがにぎわいを見せ始めている。 

耳納連山を真っ赤に染めるうきは市の柿畑

 真っ赤な山肌を初めて見た人は驚くに違いない。11月中旬から下旬にかけて紅葉が最盛期を迎える耳納連山。なだらかに延びる斜面を染めるのは柿の木だ。

 「柿は実が色づくのに合わせて葉も赤やオレンジに変わる。ふるさと納税の返礼品で送る際、葉を入れるとさらに喜ばれます」

 耳納連山の東端にある同市浮羽町小塩で3代にわたって柿栽培を続ける「岩佐農園」の岩佐和眞さん(53)がほほ笑んだ。ちょうど富有柿収穫の最盛期。斜面での作業は大変そうだが、岩佐さんは「この辺りは赤土の土壌が広がり、柿栽培には最適な環境」と語る。

 恵まれた条件は約400万年前から形成されてきた耳納連山と筑後川との間に続く緩やかな地形「複合扇状地」のたまもの。市が研究者に依頼して2015年から2年かけて地形、気温、風、土壌、水、雨、地理の「7大自然要素」を分析したところ、ワインの産地として有名なフランスのボルドー地方と似た環境にあることが判明したという。

 フランスでは土地を意味する「テール」から派生した「テロワール」が、ブドウの栽培などに適した生育環境を指す言葉として使われており、市も「うきはテロワール」を打ち出し、ブランド化に向けたPRを始めたというわけだ。

 「今後さらに注目されるよう、まずは自分たちから楽しんでます」

 目の前に地元産の柿やイチジク、ナシを使ったケーキがずらり。品定めに余念がない市総務課職員の鎗光(やりみつ)奈津子さん(34)の声は、普段の仕事中よりも心なしかトーンは高めだった。

うきは市産のフルーツを使ったケーキやジャムなどをPRする「うきはスイーツ案内課」のメンバー

 市は10月、「うきはスイーツ案内課」を発足させた。ミッションはフルーツやスイーツの里としての魅力発信。市の正式な部署ではないが、メンバーは各課からえりすぐりの「スイーツ女子」8人で、鎗光さんは〝課長〟を務める。

 市によると、16年産の柿の出荷量は5724㌧(県全体の50.6%)、モモは232㌧(同40%)でともに県内トップ。ブドウは2位、ナシは4位を誇る。テロワール効果もあってか、近年は市内にカフェや洋菓子店のオープンが相次いでおり、14年の16店から現在32店に増えたという。

 「ほとんどがUターンや移住してきた個人経営の店。生産地に近く、新鮮で手頃なフルーツが吸引力になっているのは間違いない」と鎗光さん。現在は写真共有アプリ「インスタグラム」を使った店の紹介が中心で、今後は果樹園ツアーも計画している。

 店側の意識も気になるところだ。同市吉井町の洋菓子店「ミエル」のオーナーパティシエ中野恭輔さん(33)は「ここは作り手にとって間違いなく魅力的」と指摘する。

加工施設「ミエルファクトリー」で柿のジャムを作る中野恭輔さん

 全国的に有名な川崎市のウィーン菓子専門店での修業後、13年に郷里で店を開いた。今年10月には柿畑の麓に加工施設「ミエルファクトリー」をオープン。見た目では商品になりにくい「B級品」のフルーツをピューレに加工して新たな市場開拓を狙う。

 シーズン終盤になると熟しすぎた柿が畑の傍らに大量に廃棄されるなど、厄介者扱いされる場面も少なくない。中野さんは「東京では完熟の柿が単品でフルコースのデザートに出されることもある。同業者に聞いてもうきは市産のフルーツは引く手あまたの人気。どんどん新しい価値を示していきたい」と力を込める。

 うきはの土地(テール)には、まだまだチャンスが埋まっているようだ。

※情報は2018.12.4時点のものです

西日本新聞

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